白黒思考に気づくことから始めよう ~浅田真央選手から学ぶ~
これもまた白黒? ― 英語ができるかできないか
みなさんは「英語ができますか?」と聞かれたらどう答えますか?
なぜか日本人の多くは、ネイティブ並みに話せないと「できない」と思ってしまうようです。
私も以前、駅の券売機で大柄な外国人に声をかけられたとき、思わず
「アイキャントスピークイングリッシュ!」
と言い逃げしようとしました。
すると相手は大笑いして「いや、それ英語やん!」と食い下がってきたのです。
さらに「固いこと言わずにノリで教えてよ!」と肩をバンバン叩かれ、
「¥400(200)のカッコ200ってなんなん?」と聞かれました。
一生懸命考えた末に私は「ちゃ、チャイルドプライス!?」と答えたところ、相手は大満足。
「ほら、あんた英語しゃべれてるよ!」と言われました。
…ほんまや、しゃべれてるやん。って今なら言えるかもしれません。
この体験で、「英語ができる/できない」も白黒では割り切れないことに気づきました。
「ネイティブのように話せなければ0点」というわけではなく、
「必要なときに伝わった」なら、それはもう“できている”のです。
さて、あらためてあなたに質問です。
「英語ができますか?」
「これはペンです」と言えたなら、それはもう“できている”のかもしれません。
※外国人の方の発言は私が「多分こう言ってたんだ」と思い込んでいる内容です。
こんな体験、ありませんか?
- テストで90点を取ったのに、「100点じゃないからダメだ」と落ち込んでしまった
- 仕事で1つミスをしただけで、「今日は全部失敗だった」と思ってしまった
- 体重が1kg増えただけで、「もう醜い」と感じてしまった
これらは「白黒思考」と呼ばれる考え方のクセかもしれません。
とてもシンプルですが、その分自分を苦しくさせてしまうことがあります。
白黒思考とは?
「成功か失敗か」「0点か100点か」と両極でとらえてしまう考え方のことを指します。
この思考が強くなると、小さな失敗を「全てダメ」と思い込み、心の余裕がなくなります。
「完璧にやらなきゃ意味がない」と感じてしまうと、途中までの努力や工夫を認めにくくなります。
その結果、自分にも周囲にも厳しすぎる視線が向き、息苦しさにつながります。
白黒思考が続くとどうなる?
- 自信が持ちにくくなる
- 人を「いい/悪い」で分けてしまう
- 「どうせ無理」とあきらめが早くなる
こうしたパターンが積み重なると、日常の小さな喜びや成長の芽に気づきにくくなります。
ちょっと柔らかく考えてみませんか?
白黒で考えてしまったときは、その間にある“グレー”を探してみましょう。
- 「今日は友だちの相談にのりたいけど、疲れているから別の日にしよう」
→ 無理をしない選択が、関係を長く大切にする力になります。 - 「完璧にできることは素晴らしい。でも、工夫した過程や挑戦そのものにも価値がある」
→ 白と黒の間にある小さな前進を見つけることが、心を少しずつ楽にします。
完璧じゃなくても残るもの
フィギュアスケートの浅田真央選手は、自身最後のオリンピックであるソチオリンピックで、初日は実力を出し切れず16位という過去にない成績に留まりました。
誰もが信じられないものを目にしたような心境に陥いりました。
しかし翌日、自己ベストを更新しフリーで3位の好演技を見せてくれ、浅田選手はこれ以上ない笑顔を浮かべ、そして涙を流しました。
試合後のインタビューで浅田選手はこう答えています。
「昨日はすごく悔しい思いをして、心配してくださった方もたくさんいると思いますが、今日こうして自分の中で最高の演技をできたので、恩返しができたと思います」
総合成績は6位。
でも、その成績には到底収まらないインパクトと余韻を残して、浅田選手は最後のオリンピックを終えました。
※上記のエピソードは、THE ANSWERの記事 を引用・参考にしつつ、再構成したものです。
1位じゃなくても、メダルが取れなくても日本中の心は感動に満ちました。結果だけがすべてではありません。
そして浅田選手自身、これまで「ノーミスで!」と繰り返し発言されていたことが白黒の呪縛だったように思いますが、この時その呪縛から解き放たれたのでしょうか。
Q&A:よくある質問
Q. 白黒思考に気づいたとき、どうしたらいい?
A. 「全部失敗だった」と感じたら、「本当に0点だった?」と一呼吸おいて問い直すことから。小さな成功や頑張れた部分を一つずつ見つけてみましょう。
Q. 白黒思考は悪いことなの?
A. 白黒で決める力が役立つ場面もあります。ただ、強くなりすぎると自分を追い詰めます。「はっきりさせる力」と「やわらかく見る力」のバランスを意識してみてください。
宿題?小さなワーク
今日の中で「できたこと」を3つ書き出してみましょう。
「全部できなかった」と思う日でも…
- 朝起きられた
- ご飯を食べられた
- 誰かに声をかけられた
こんなふうに、小さなことは必ず見つかります。
それが、白と黒の間にある“グレー”を見つける第一歩です。
さいごに
白黒思考は、誰にでも自然に起こること。
でも、その間にある「色」に目を向けてみると、心はふっと軽くなります。
今日の自分に、ほんの少しでも「よかったところ」を見つけてあげてみませんか。
その一歩が、あなたをやさしく支えてくれるはずです。
※本コラムは心理教育を目的とした内容です。
診断や治療を行うものではありません。

