子どもに
怒ってしまう
怒鳴ってしまった夜。あとに残る自己嫌悪。気づけば毎日、同じことをくり返している気がする。
「怒ってしまう」という一つの悩みを、10の角度からほどきました。怒りをなくすためではなく、その怒りが何を守ろうとしていたのかを知るために、読んでみてください。
怒鳴ったあとに「失格かも」と落ち込めること。それ自体が、あなたが子どもを大切に思っている証拠です。どうでもいい相手に、人はここまで胸を痛めません。
怒りは、性格の問題というより、心の余白がなくなったときに出る反応です。危ないもの、大変なものから、自分と子どもを守ろうとして、体が先に反応してしまう。あなたが選んで出しているというより、疲れきった心が、とっさに立ち上がっているのです。
怒鳴らない方法を探す前に、あなたが少し息をつける時間のほうが、先に要るのかもしれません。
自己嫌悪が消えないのは、あなたが「そうしたかったわけじゃない」と、心の底で分かっているからです。その苦しさは、優しさが行き場をなくしている状態です。
怒った自分を責め続けても、次の怒りは止まりません。むしろ、責める声が心をさらに追い込んで、余裕をうばっていきます。もし親友が同じことで泣いていたら、あなたはきっと「そんなに自分を責めないで」と言うはずです。その言葉を、今日は自分にも向けてあげてください。
謝りたい気持ちがあるなら、もう十分に、あなたは親をしています。
「毎日怒っている」と感じるとき、心は怒った日ばかりを強く覚えていて、穏やかに過ごせた時間を数えそびれています。人の記憶は、うまくいかなかった場面のほうを、濃く残すようにできています。
本当に毎日ずっと怒り続けている人は、そもそも「怒りすぎたかな」と振り返りません。振り返れているあなたの中には、ちゃんと穏やかな時間も流れているはずです。
「いつも」という言葉を、一度そっと外してみる。それだけで、見え方が少し変わることがあります。
上の子に強くなってしまうのは、あなたが上の子を「もう分かる子」として、どこかで信頼しているからでもあります。期待とは、その子を軽んじる気持ちの逆側にあるものです。
とはいえ、当たられた側の心と、当ててしまう側の後悔は、どちらも本物です。どちらかを否定しなくて大丈夫です。気づいてしまったなら、あとからそっと、その子だけの時間を少し作る。それだけでも、子どもは案外わかってくれます。
偏りに気づけたことは、責める理由ではなく、直せる余地がある証拠です。
怒りが止まらなくなるのは、あなたが冷たいからではありません。心と体が、限界のところで警報を鳴らし続けている状態です。危険を感じたとき、人の体は自分の意思より先に、戦うモードに切り替わってしまうことがあります。
だから、その瞬間に自分を「言い聞かせて止める」のは、とても難しい。止めることより、その手前で、心と体をどれだけ休ませられているかのほうが効いてきます。まずはその場を数十秒だけ離れる。深く息を吐く。体をゆるめる合図を、少しずつ思い出していく。
怖いと感じているなら、それは一人で抱えず、誰かと一緒に見ていっていいサインです。
怒ってしまったことより、そのあとどう戻ってくるかのほうを、子どもはよく見ています。ぶつかっても仲直りできる、という体験そのものが、その子の安心の土台になっていきます。
だから、完璧に怒らない親である必要はありません。「さっきは言いすぎたね」と一言そえるだけで十分です。それは弱さを見せることではなく、人との関係は直せるのだと、身をもって教えていることです。
謝ろうと思えた時点で、あなたと子どものあいだは、ちゃんとつながっています。
怒ってしまうのは、あなたが一番近くで、一番多くを引き受けているからかもしれません。逃げ場のない場所で、休みなく向き合っている人ほど、感情はあふれやすくなります。
おだやかでいられる人と、あふれてしまう人。その差は、心の強さではなく、背負っている量と休めている時間の差であることが多いです。あなたが怒りっぽいのではなく、あなたに重さが寄っているのだとしたら、まず見直すのは性格ではありません。
「私ばかり」と感じるその感覚は、わがままではなく、大事なサインです。
怒らない親を目指すほど、怒ってしまった日の自分に、点を引いてしまいます。ゼロか百かで採点すると、少しのつまずきが、全部の失敗のように感じられてしまうのです。
目指す先は、怒りをゼロにすることではなく、怒っても戻ってこられること、かもしれません。怒らない親ではなく、怒ったあとちゃんと立て直せる親のほうが、子どもにとっては安心です。完璧な穏やかさより、揺れても戻る姿のほうが、ずっと人間らしくて伝わります。
なれない自分を責める代わりに、戻ってこられた回数を数えてみてください。
「怖い」と感じて、こうして立ち止まれていること。それは、あなたの中のブレーキが、ちゃんと働いている証拠です。本当に危ういのは、怖いとも思えなくなったときです。あなたはまだ、その手前で踏みとどまっています。
その瞬間が来たら、まず子どもと少し距離をとって大丈夫です。別の部屋へ行く、外の空気を吸う、それは逃げではなく、二人を守る行動です。追い詰められた心と体が起こす反応なので、意思の弱さではありません。
ただ、この怖さは一人で抱えないでください。誰かに話しておくことは、あなたと子どもの両方を守る、いちばん確実な一歩です。
とっさに出る言葉や声の強さは、頭で選ぶより先に、育ってきた中で体に染み込んだものが出てきます。だから「同じことをしている」と感じるのは、あなたが悪いのではなく、それだけあなたが、そういう環境を生き抜いてきたということです。
そして、そのことに気づいて「変えたい」と願っている時点で、あなたはもう、くり返しの外に出はじめています。染みついた反応は、責めても消えませんが、少しずつ上書きしていくことはできます。焦らなくて大丈夫です。
あなたが受け取れなかったやさしさを、いま自分に向けてみることから、その連鎖はほどけていきます。
できない」そんな日も、あります。
できないことを、責めたいわけじゃありません。まず自分の気持ちを、ただ整理したいだけの人もいます。何をどう相談すればいいのか、わからないままでも大丈夫です。
コンパスは、そんなときのための場所です。答えを急がず、あなたの話をそのまま聴きます。
怒ってしまう自分を、
ひとりで抱えないで。
スマホひとつ、声だけで。あなたに合う専門家を、代表がひとりずつ選んでご案内します。
吉田 剛 Go Yoshida
看護師・保健師・養護教諭
精神科病院にて10年以上勤務し、多くの方の心に寄り添ってきました。
国立精神・神経医療研究センター主催のPTSD・摂食障害研修を修了。
トラウマインフォームドアンバサダーとして活動する傍ら、病院では週1回、「うつ病のためのメタ認知トレーニング」のトレーナーとして臨床にも携わっています。
「答えを出す」ことよりも、あなたの「心の中を整理する」お手伝いを大切にしています。

